今回は相談事例を通じて、死後事務委任契約といわゆる墓じまいについて、ご紹介します。
私は未婚で子供もおらず、唯一の親族だった母を2年前に亡くし、いわゆる「おひとりさま」になりました。兄弟姉妹もおりませんので、自分の死後の手続きを誰が担ってくれるのか不安に思っています。
それと同時に、代々埋葬・納骨してきたお墓をどうしたらよいのか悩んでいます。現在は私が管理しているのでよいのですが、私の死後、お墓の管理をする人がいなくなりお寺さんに迷惑がかかってしまうと思うので、いずれは墓じまいをしなければと考えています。ただ、今すぐに墓じまいをするのは気が引けてしまいます。何かよい方法はありますか。
ご自身の死後の手続きについて、頼れる親族がいなかったり、親族を頼ることが憚られたりする方は「死後事務委任契約」の活用を検討されることをお勧めします。
また、死後事務委任契約では、受任者にて墓じまいの対応をすることも可能です。
死後事務委任契約は、ご相談者様のような状況にある方が、お元気な今のうちに、自身の死後に発生する関係者への連絡、本人の遺体の引き取り、葬儀・供養、病院・介護施設利用料等の未払費用の精算等の事務の遂行を、第三者(例えば専門家)に任せるための契約です。死後事務委任契約を締結することで、ご相談者様の1つ目のご不安は、解消されるのではないでしょうか。
また、死後事務委任契約のお話を進める中で必ずといっていいほど出てくる問題が、お墓についてです。家族の在り方が多様化している現代では、以前のようにお墓を当たり前に承継していくことが難しい時代となりました。そこで考えなければならないのが「墓じまい」についてです。
死後事務委任契約を結ぶ場合は、まず大前提として、ご自身がどうしたいかを大切にしてください。大切な場所(お墓)ですから、自分が生きているうちに墓じまいはしたくない、自分もそこに埋葬してほしいというお気持ちがあるのであれば、そのお気持ちを反映した委任内容にすることができます。
ただし、お寺や墓地には独自のルールや規則がある場合が多く、委任者と受任者とお墓の管理者で相談・検討が必要になりますのでご注意ください。例えば、亡くなられてから一定期間はお墓に納骨、その後は改葬(墓地、埋葬等に関する法律第2条第3項)して合同墓で永代供養、お墓は墓じまいする、という内容を受任者に委任することに関し、お墓の管理者の承諾が得られれば、ご希望を実現できる可能性が高くなります。
お墓は代々受け継がれてきた大切なものです。どうするのが正解というものではありませんので、まずはご自身のご希望を考え、それに合う手段・方法を検討していただくとよいでしょう。
死後事務委任契約業務をしている専門家にご相談いただければ、過去の事例からお話をしたり、別の手段・方法をご提案したりできる可能性もございますので、お悩みの方は一度ご相談いただくとよいでしょう。