今回は相談事例を通じて、死後事務を委任する際の事業者の選び方について、ご紹介します。
私は実子のいない80歳女性です。夫が数年前に亡くなり、自分が亡くなったらどうなるのだろうと漠然と不安になりました。夫には実子がおり私も一緒に暮らしておりましたが、養子縁組をしなかったため他人同士です。ただ、夫の子どもたちと関係性は築けているので、私が亡くなった後の手続きや葬儀等してくれると思いますが、なんだか申し訳ない気持ちになるので、第三者に任せたいと考えています。
最近耳にする「死後事務委任契約」を調べましたが、たくさんの業者が出てきてどこに相談すればよいのかも分かりません。私のようなおひとりさまでなくても、契約は結べるのでしょうか。また、どの業者にお願いするか、どのように決めたらよいのか教えてほしいです。
おひとりさまでなくても、死後事務委任契約は締結可能です。また、受任者の決め方は、内閣府等が策定した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を確認の上、そのガイドラインに適した事業者を選びましょう。ガイドラインに適した業者の中で、ご自身が何を重視するかを基準に決めていただくとよいと思います。
死後事務委任契約とは、相続財産に関しない部分の事務手続きを対象として、第三者に任せるという契約です。一例をあげるとすれば、葬儀や火葬、納骨・埋葬、ライフライン契約の解約等があります。これらは一般的に親族が行うことが多いため、親族がいない・親族に頼れない方などに注目されています。
しかし、親族がいる方であっても「親族に迷惑をかけたくないから」という理由で、あえて第三者と死後事務委任契約を締結する方もいます。死後事務委任契約は、おひとりさまでなくても、死後事務を任せたいという気持ちがあれば誰でも締結できますので、ご相談者様も締結することが可能です。
死後事務委任契約をどの事業者にお願いするかは、とても重要なポイントです。死後事務委任契約が注目され始めてから、様々な事業者がサービスを始めていますが、死後事務委任契約に関する法律・法令等は未だ整備されていません。そのため、お客様が理解していない状態で多額の金銭を支払わされる、解約をしてもお金が戻ってこない、といったトラブルが発生しています。
そこで、令和6年6月に内閣府等が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(※)を策定しました。高齢者等終身サポート事業者が取り組むことが重要と考えられる事項をまとめたものです。事業者が取り組むべき事項のチェックリストもあるため、事業者選びの際に、このチェックリストのチェックが埋まる事業者をご選定いただくとよいと思います。
ガイドラインやチェックリストを使って選定した上で、ご相談者様が何を重視するか、例えばネームバリューなのか、費用なのか、サービスの手厚さなのか等、基準を決めて選ぶとよいでしょう。
ひとまず話だけ聞きたい、ということもできます。死後事務委任契約について詳しく知りたいという方は、死後事務を引き受けている専門家や事業者に相談されてはいかがでしょうか。
参考:
法務省「高齢者等終身サポート事業者ガイドラインについて」
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