今回は相談事例を通じて、相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立てについて、ご紹介します。
同居していた兄が亡くなりました。兄は独身で子供はおらず、親はすでに亡くなっています。兄弟は私一人ですが、私は相続放棄をしています。自宅に兄の財産があるのですが、処分してもよいでしょうか。
相続放棄をしても、その放棄の時に被相続人の財産を現に占有している時は、他の相続人又は「相続財産清算人」に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない(民法第940条)とされていますので、ご相談者様が勝手に処分することはできません。
また今回のケースでは、ご相談者様が被相続人(お兄様)の財産を処分した場合、被相続人の相続の単純承認事由に該当すると考えられますので、ご注意ください。
相続人がいない場合、利害関係人は家庭裁判所に「相続財産清算人」選任の請求をすることができます(民法第952条1項)。
この利害関係人には、被相続人の債権者だけでなく、被相続人の財産を管理している者が含まれますので、ご相談者様が「相続財産清算人」選任の申立てをすることができます。
「相続財産清算人」とは、相続人の代わりに被相続人の財産(債権・債務)を清算する人のことで、被相続人の相続財産を適切に管理し、残余財産があった場合、国庫へ帰属させる役割があります。なお、相続財産清算人は2023年4月1日の民法改正前は、相続財産管理人として規定されていました。
ご相談者様にて「相続財産清算人」選任の申立てを行い、選任された「相続財産清算人」にご相談者様の保存する被相続人の財産を引き渡すことができれば、財産管理義務はなくなります。
「相続財産清算人」の申立てには、裁判所の判断が必要であったり、必要な書類が煩雑であったりするため、お近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。
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