今回は相談事例を通じて、後見人の決まり方について、ご紹介します。
先日、父が他界し相続が発生しました。母が認知症で父の遺産についての手続きが進められないため、後見制度の利用を考えています。後見人には弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いと聞きましたが、親族が後見人となることは難しいでしょうか。
ご相談者様のような希望を持たれる方は多くいらっしゃいます。成年後見制度は、家庭裁判所が本人のために様々なことを勘案し、職権で進めていく制度です。そのためご希望どおりになるかどうかは、家庭裁判所の判断になりますので、一概にはいえません。
前述のとおり成年後見制度は、家庭裁判所が本人のために様々なことを勘案し、職権で進めていく制度です。本人を巡る状況や本人の財産状況を踏まえ、親族より専門家を後見人とすることが本人のために望ましいと考えた場合に、専門家を後見人として選任することも、その職権のひとつです。
家庭裁判所が専門家を後見人として選任する理由は様々ありますが、主なものとして
があげられます。
このうち、1.については、本人に関連して親族間で争いが顕在化しているので、親族が後見人に選任されることは難しいと思われます。
しかし、2.については、家庭裁判所は親族後見人による本人財産の使い込みを懸念して、専門家後見人を選任するものと思われますので、使い込みができない状態となれば、家庭裁判所が親族を後見人とすると考えることも可能と考えられます。
具体的には、本人の財産のうち、日常的な支払いをするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を家庭裁判所の監督下に置き、日常生活で使用しない流動資産は、事前に家庭裁判所の指示がなければ引き出すことができない信託や預金とすることにより、後見人による使い込みを防止するというものです。
このような本人の通常使用しない財産を家庭裁判所の監督下に置く信託や預金は、後見制度支援信託や後見制度支援預金として金融機関が扱っています。この信託口座や預金口座の開設は選任されている専門家後見人が家庭裁判所の指揮の下で行いますが、これを利用することにより、流動資産の大部分が家庭裁判所の監督下に置かれることとなるので、最終的には家庭裁判所の判断となりますが、一旦、専門家が後見人に選任された後に、親族後見人に引き継ぐことが可能な状態となります。
なお、この信託や預金を利用するかの判断も家庭裁判所の権限の下にあるので、成年後見申立時から、このような制度を利用し、将来的に親族後見人としたい旨の希望を家庭裁判所へ伝えておくことが大切になります。
本人を取り巻く様々な状況を勘案して、本人のために家庭裁判所は職権を行使していきますので、どのような希望があるのか、その希望は達成できるのか、どのように家庭裁判所へ希望を伝えたらよいのかなど、具体的には、お近くの弁護士、司法書士へのご相談をお勧めいたします。