今回は相談事例を通じて、停止条件付遺贈について、ご紹介します。
私には孫がおり、この子が社会に出るまで見届けたいとは思いますが、年齢を考慮するとあまり現実的ではありません。せめて遺産を学費として使ってもらいたいと思っているのですが、私が死亡した際の相続人に孫は該当しない場合、どうしたら孫にお金を遺せるでしょうか。
私としては学びに使ってほしいという思いがあるので、将来孫に進学の意思がないのであれば、本来の相続人間で分けてほしいと考えています。
まず、相続人に該当しない方へ遺産を分けることは「遺贈」にあたりますので、遺言を書いておく必要があります。遺言がない場合は、法定相続人の共有財産となるため、お孫様へ渡すことはできません(民法第964条、第898条@)。
遺贈にはいくつか種類がありますが、今回のケースであれば遺言に停止条件を設けることにより、相談者様のご意向に添えるのではないかと思います(いわゆる停止条件付遺贈)。
将来発生することが不確実な事実や内容について、それらが成就したときに法律上の効果が発生する条件のことをいいます。(民法第127条@)
民法第985条Aには、「停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる」とあります。
例えば、「孫が大学生になったら、●円を遺贈する」と記しておくと、遺言の効力発生時にお孫様が大学へ進学されている場合、指定した額を遺贈することが可能です。
なお、お孫様が進学されないことが確定した場合は、遺贈の効力は生じず、停止条件付に係る財産(●円)は相続人へ帰属するため、この点でもご意向どおりとなります(民法第995条)。
条件を設ける際の注意点として、「生活に困っていたら」や「幸せなら」といったあいまいな表現は、解釈をめぐるトラブルを引き起こしかねないため、配慮が必要です。どのような条件を付けるか、トラブルの元にならないような遺言作成のためにも、専門家に相談するとよいでしょう。