今回は相談事例を通じて、戸籍証明書等の広域交付制度について、ご紹介します。
父が亡くなりました。相続の手続きには、父の出生から死亡までの戸籍謄本が必要と聞きました。父は生前、転勤が多く本籍地を何度も変更していたようで、戸籍の収集が大変だと思っていたところ、戸籍証明書等の広域交付制度を利用することで収集の負担を軽減できると聞きました。制度について詳しく教えてください。
2024年(令和6年)3月1日より、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行されました。これにより、ご相談者様の最寄りの役所で、全国各地の戸籍をまとめて請求することが可能となりました。
改正前は、各市区町村で個別にシステムを構築していたため、本籍地のあった市区町村に個別に請求する必要がありました。今回の改正により、市区町村役場が法務省(戸籍情報連携システム)と連携を図ることで、1ヶ所の役場(本籍地ではない、かつ最寄りの市区町村役場)への申請で、お父様の本籍地であった各市区町村役場に保管されている戸籍の請求を行うことができるようになりました。
上記のような便利な制度ではありますが、注意点もいくつかあります。
1ヶ所への請求で済むことから、申請者の手間や負担を軽減できる反面、平日に時間を確保できない方や、役所へ足を運ぶことが困難な方は利用が難しい制度です。
また、兄弟姉妹などが法定相続人になる場合、この制度の利用で取得できる戸籍は、直系の第一順位(直系卑属)、第二順位(直系尊属)の相続人がいないことが証明できる範囲に限ります。一度の請求で相続の手続きに必要な範囲の取得はできませんので、ご注意ください。