今回は相談事例を通じて、親の生活費等を親の預金で賄う場合の注意点について、ご紹介します。
別居していた母が高齢になり、一人で生活させるのが不安になったため、先日から我が家で同居してもらうことになりました。
今後の母の通院費や生活費は、母の承諾を得て母の預金から工面することを考えております。母の相続を見越して気を付けておくべきことはありますか。
なお、父はすでに亡くなっており、母の法定相続人には私(長男)と弟と妹の3人がおります。
弟様や妹様との関係次第ですが、お母様の相続開始後、お母様の預金口座からの払戻金の使途が明らかでない場合には、弟様や妹様から、相談者様による使い込みを疑われる可能性があります。
この場合、弟様や妹様から相談者様に対して使い込みを疑われている金額について支払うよう、訴訟にて争われることがあります。
仮に訴訟となった場合には、使途が正当であること(=お母様の承諾を得て、お母様のために使用していたこと)を相談者様の側で立証することが求められますので、相談者様においては、今のうちから払戻金の使途について都度記録を残しておくとよいでしょう。
立証の面から見た使途の記録のベストな方法は、お母様のために要した費用に関するすべての資料を整理・保管しておくことになりますが、長年にわたる生活費の資料は膨大になり得ますし、また、領収書が残らないような出費(例えば孫へのお年玉等)もあり得ることから、そのような方法を採ることは実際には困難だと思われます。
そこで、可能な限りでの資料の整理・保管を行い、それと合わせて年に1回程度、預金口座からの払戻金についての支出明細書を作成し、これを他の相続人に報告・送付するといった対応を採ることがベターな手段だと思われます。
また、相続開始後における紛争を回避するためには、相談者様において日頃から弟様や妹様との関係を良好に保っておくことが肝要であり、そのためにも上記の報告等によって、相談者様によるお母様の介護について弟様や妹様からの信用を得ておくことが望ましいといえます。